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登場人物
真田秀長(主人公)/元請会社の社長/竹中静馬(副社長)/松平正道(行政書士)/豊臣不動産

物語9の全景画像

9.吸収合併の大チャンス
第2期もお世話になっている元請から土木関連のとび土工の下請の仕事が引続き入って来たので慌てる 必要はなかったが、新たに土木一式工事の実績を出来るだけ積んで信用とノウハウを獲得しなければ ならない。秀長は社内の仕切は竹中にまかせ不動産会社に顔を出すことにした。不動産会社は造成、整地 などの土木一式工事をやりその後に建築工事が続くことが多いので、不動産会社への売り込みは第2期の 最優先事項である。近隣の不動産会社はそこそこ名前の売れているところが5社ある。秀長は最初の1ヶ月 かけてこの5社の社長に真志建設を売り込んだ。以後2ヶ月に1回は顔出し、会食等で接触を強化した。 この中に後にお世話になる豊臣不動産がある。

第2期も最初の四半期が過ぎた頃、豊臣不動産の社長から来て貰いたいと電話があった。豊臣不動産は 近隣の大手不動産会社でこの10年でもっとも成長している不動産会社である。秀長は何となく社長の 豊臣氏が好きであった。成長している割りにはがつがつしたところがなく、しかし計算はきちんとして いるがそれを外に出すところが無い。

豊臣社長は郊外型の大型店舗用の土木建築工事を中心にしていたが、今回の話はかつて町の中心部 だった地区の再開発の話である。本来は公共工事としてやるべき話だが町は踏み切れないでいるらしい。 実はこの町は数10km離れたこの県の中核都市のベッドタウンになりつつあるがその中核都市は近年 駅前再開発が成功して近隣から電車による客層を集めている。秀長の町からも車より電車でこの中核 都市に出かける人が多くなり自然と駅周辺が混雑し始めてきた。これに余勢を駆って当町の駅周辺を 再開発する話である。豊臣社長は駅周辺の再開発に情熱を燃やしていた。金融機関も前向きで豊臣社長の 指導力に期待していた。

豊臣社長は秀長の曾祖父が筋金入りの棟梁であったことを知っていた。秀長が最初に挨拶に来たときに 豊臣社長は秀長の建設業に対する熱意を感じていたし、この若い社長を育ててみたいと思った。豊臣社長 が秀長に出せるのはこの土木工事の一部のみではあるが、それでも今の秀長には荷が重かった。案の定 豊臣社長は発注条件を出してきた。今の会社の所帯では今回の土木工事を出すには小さすぎるので豊臣 社長の知っている建設会社を吸収して20人程度の所帯に拡大せよと言うのだ。この対象の会社は長く 建設業をやってきたが後継者が無く、従業員のために誰かに吸収されることを希望していた。

秀長は吸収合併とそれに伴う資金の相談を早速信用金庫に持ち込んだ。正直言って秀長はこういう 法律と金融の話は面倒であった。幸い豊臣社長の話に協力的な信金は前向きに考えてくれた。対象となる 建設会社の財産価値と将来の発展可能性を評価して金銭を支払うのだが株主への退職金も考えなくては ならない。これらの交渉事を信金は秀長を代表してやってくれたので大体4ヶ月ほどでけりが付いた。 真志建設が存続会社としてこの会社を吸収することとなった。

この会社は土木一式工事、建築一式工事、とび土工、舗装などに関して特定建設業許可を持っていた。 この会社の特定建設許可を引き継げば元請としての受注活動が出来5000万円を超える下請工事にも 参加できるので事業の幅が拡がるのだ。秀長は建設業許可の承継に関する一切を松平先生に任せた。 令和2年の法改正で吸収する会社の建設業許可を引き継ぐことが可能となったので、承継許可申請を 60日前に出すことができた。秀長が持っていた一般建設業の許可は廃業届を出した。