登場人物
真田秀長(主人公)/元請会社の社長/竹中静馬(副社長)/松平正道(行政書士)/豊臣不動産
3.独立の条件
秀長はこの10年貯金をしてきた。手元には500万円ある。年に50万円貯金する為には月に
4万円なので秀長は遊ぶ金はなかった。これは社長に半ば強制的に貯めさせられたのである。
社長は自分の経験から独立するときは500万円の貯金があった方が建設業許可を取るときに
都合が良いと言うのを知っていたからである。500万円はそれほど大きな金額ではないが
これをこれから貯めるとしたらやはり5年以上かかるので独立を決めた今では社長の強制は
有り難かった。
元請の社長は会社が出来たら仕事は回してくれると言質を入れてくれているので正直 多少の不安はあるが自分が先頭に立って頑張るしかないと腹をくくった。若い従業員も 今までのつきあいの中から2,3人は入社してくれそうである。
500万円の元手があるとは言え建設用諸設備、事務用設備、車の費用はこんなもの では賄えないが、これは今までの会社に出入があった地元信用金庫から借りることが出来た。 現在では金融機関は以前のように個人保証迄求めないが今の会社の社長と元請会社の社長が 信金に口添えしてくれたのである。事務所は当面実家の離れに多少手を入れただけで金を 掛けないようにした。
秀長はこの10年の後半は資金繰り、外注の使い方、契約書実務で社長を助けてきたので 経営の要点は外さない自信があったが、建設業許可を取るためには外部から5年以上の 建設業の経営管理経験者を入社させる必要がある。これを経営管理業務責任者(「経管」) というが会社にひとり常駐の必要がある。秀長が社長として5年経験を積めば自分が 経管となって交替すれば良いのだがそれまでは外部からスカウトした人材を役員として 迎える他はない。いわば共同経営者として働いて貰うので気心を十分通わせる必要はあるが、 秀長が社長であるから主客転倒してもらっては困るのである。
秀長は心当たりがなかった。今の会社の社長も元請会社の社長も適当な人材を知らない という。秀長はここで思考停止した。どうすれば良いか!
偶々元請会社の社長が最近「経管」スカウトのサイトがあるとの情報を持ってきた。 ハウスメーカーの知人がそのサイトを使って子会社の経管を決めたのだという。秀長は ハウスメーカーの社長に会ってスカウトシステムの有用性を悟った。費用もリーズナブル だというので秀長は早速募集をかけた。実際に応募して来た人は40代半ばの建築一級 の人であった。名前は竹中静馬という。隣町の建設会社の役員であったが事情があって 会社が畳まれることになり偶々転職先を探していたという。介護している親が居るため 近場での転職が条件であったが今まで適当な会社が見つからなかったのだ。
秀長はホッとした。もがいてみるものである。自分はツイているのかもしれない。 これで経管は確保できた。また営業所技術者(専技)の確保という面からも竹中は 建築一級で秀長は土木一級なので良い組合せである。建設29業種のうち半数程度が 営業可能業種として射程に入る。